「麺哲」@豊中 追い秋刀魚肉塩 2006.07.16(日)實食

秋刀魚ダシは、ともすれば抑揚の無いドライな味はひになりがちである。ラーメンに秋刀魚を使ふことのはしりは「麺屋武蔵」だと思ふが、その「武蔵」ですら初期の頃はバランスが今ひとつで「頑張つてゐるのはわかるけど、今ひとつ物足りない」といつた印象であつた。
麺屋武蔵」はその後、蝦油との運命的な邂逅で飛躍的な進化を遂げた。最近でこそあまり芳しい評判を聞かないが、一時代を築いた味であつたことに間違ひは無い。
しかし、「武蔵」以降秋刀魚ダシで成功してゐる店はあまり聞かない。關西では「虎一番」(ビリ)も秋刀魚を使つてゐたし、最近では「麺屋しゃかりき」が限定メニウ「淡海地鶏あっさり白湯」として鷄と秋刀魚を使つたラーメンを出してゐたが、私が食べた限りではやはり ひと味足りない 感は否めなく、やはり秋刀魚節といふ食材自體がラーメンに向いてゐないのか、或いは非常に使ひ辛いのではないかと想像してゐた。
さういふ譯で此の「追い秋刀魚」もさほどの期待は抱かずに食してみた。


(゚д゚)ウマー


何の何の。味にふくらみと奥行きがあり、塩加減もこれまた絶妙。見亊な出來映へのスープであつた。
此の「追い秋刀魚」、正確には「追い」ではないさうだ。通常、「追い」ダシとは一旦ダシを取つたものに、更に味を加へる爲に後から追加するものなのだが、此の「追い秋刀魚」は鷄と秋刀魚を別々に取つて混ぜてゐる、所謂「ダブルスープ」である。問うてみると當初は「追い」であつたらしいのだが、試行錯誤の末にこの形に落ち着いた樣だ。
MIG氏は春の「追い秋刀魚」を評して 「あえてその秋刀魚ダシとコーチンだしの喧嘩を楽しむべし」 と書いてをられた*1が、今囘の一杯は以前のものとは少々違つてゐるのか、喧嘩などではなく素晴らしいハーモニイ、 表の秋刀魚と裏で支へる鷄 がきつちりと自らの役割を果たしてゐるのを樂しませて頂いた。
唯一の後悔はハートランドのアテにするべく「肉塩」で注文してしまつたことである。此の麵と具、そしてスープの完璧なバランスを味はふのなれば、MIG氏も書かれてゐた通り「肉塩」はよしておいた方が良い。


月 旧一的評價;★★★★★ !!!!!


實は此の「追い秋刀魚」、店主の庄司氏ではなく河崎氏の作品である。庄司氏にすら滅多に出さない ★★★★★ をお弟子さんの作品につける結果となつたのだが、この一杯はものの見亊に私のツボにハマつてしまつた。これで 前囘の失敗 はリカヴアー出來たとして、あとは今日この日の味を瞬間風速としてではなく、季節や時間に關係なく安定して供給する亊が出來るかどうか、がこれからの課題である。

次囘の昼限定では、何を見せて頂けるのであらうか?今から樂しみにしておく。

*1:id:ross-mig:20060310#p1:※リンク切