「豚の骨」@大和郡山 豚骨つけ麺 2009.01.22/02.05實食

・・・とまあ、波平氏がベタ褒めしてゐる譯だが、全てを鵜呑みにするのは如何なものか。
元々、一部の「無鉄砲」フリーク逹は、某巨大掲示板等で 「キモい」ムテヲタ と呼ばれてゐる樣に、兎に角代表・赤迫重之氏の手にかかつたものならば何でも美味いと盲目的に信じ込んでゐる、 一種の宗教信者 みたひなものである。
また波平氏にしても、以前 日記のコメント欄にも書かれてゐた 樣に、赤迫氏の作品に關しては
「事実上名誉店扱いにしており、多少のブレや一時の疑問作に関してはあえては言及しない事にしております。」
といふスタンスを取つてをり、ネガチヴな意見は亊實上、隱蔽されると考へておいた方が良い。

・・・といふ譯で、眞實を解明すべく、試して參りますた。

豚骨つけ麺850圓(自家製極太麺300g)の麪


(゚д゚)ウマー

先づはこのつけ汁、昨今巷で流行つてゐる魚粉はおろか、砂糖、酢、そして化調も使用してゐない。
またタレは新たに作つたものではなく、既存の豚骨ラーメンものを流用し、成分はいぢらづ單に つけ麪用に量を多く入れてゐるだけ 、とのこと。
にも關はらづ、きつちり「つけ麪」してゐるこの味はひはどうだ!!
それを作り上げてゐるのは、 豚骨をとことん煮込んだ濃厚ダシ に他ならない。
豚骨ダシは、ただ單に 濃厚であればいい、といふものではない のだが、このつけ汁は濃厚さ具合が何とも絶妙なのだ。波平氏が上の記亊で 「濃厚でありながらナメラカ」 と評された通り、極めて濃厚であるのに喉への引掛かりが殆ど感ぢられづ、至極飮みやすく仕上がつてゐる。
加へてこの絶妙な甘味はどうだ!!
赤迫氏が釜の前に立つた時の豚骨は甘味が違ふ、といふことは 以前にも一度書いた が、決してドライにはならづに豚骨から甘味を100%確實に引き出すことにかけて、私の知る限り彼の右に出る者はゐない。
言葉にすると 濃厚豚骨ダシに多い目のタレを合はせただけ である。しかし、他の誰かが眞似をしやうとして豚骨を煮込んだとしても、單に 鈍重なニカワ汁 が出來るだけか、惡くすれば焦がしてしまふのがオチであらう。
此の雜味を廃してナメラカに仕上げ、かつこれだけの濃厚さを保つべく、絶妙のタイミングで火を入れる技術!!それが「豚骨の聲を聞くことが出來る」と言はるる 赤迫氏の凄さ であり、一部の 「キモい」ムテヲタ どもから
「示申」
と呼ばれる所以なのである。

茹で上がりまで約6分かかる極太麪は先日、中華蕎麦「とみ田」@松戸 での修行で會得したものをベースとしてゐる。
そこに關東の名店での食べ歩きの經驗をふまえ、濃厚豚骨のつけ汁に合はせるべく種類の違ふ国産小麦を獨自の工夫で巧みに配合し、モチモチ感としつかりとした齒應へを兼ね備へた食感を作り上げてゐる。
當初は若干締まり過ぎの感があつた、との聲も聞いたが、私が食した際はそのまま口にするとやや硬さが殘るものの、つけ汁に入れると程良くユルむ絶妙の茹で上がり。その分つけ汁が冷めて來たらやや硬く感ぢられて來るのはまあご愛嬌 (^_-) といつたところだが、ムテイムテイとした食感も、滑らかな喉越しもつい先日、學んで來たばかりとは到底思へない程の完成度の高さである。
何よりつけ汁との相性が拔群に良く、喉越しは滑らかであるのに濃厚スープをはじくことなく絡むこと絡むこと!!また、しつかりと身が詰まつてゐる割に鈍重さは無く、スルスルと胃に入つてゆく。 ただ目新しさだけで 食感の劣惡な流行りの全粒粉 なんぞにホイホイ飛びついたりはせづ、麪の眞のうまさとはどういふものであるのか、考へに考へ拔かれた末の成果であらう。


(゚д゚)ウマー (゚д゚)ウマー (゚д゚)ウマー!!!!!


・・・とまあ、ガラにも無くベタ褒めしてしまつた譯ではあるが、難点が無かつた譯ではない。
初囘私が氣になつたのは、やや 一味が強かつた ことだ。その辛さ自體は問題にする程でもなかつたのだが、一味の刺激により感覺が狂つてしまふのか、 チヤーシウとメンマが夲來の味以上にしよつぱく感ぢられた
實際、その日のチヤーシウやメンマがたまたま通常より濃い味附けだつたのか?と、一度水で舌を洗つてから口にしてみた時にはその樣なしよつぱさは感ぢられづ、勿論、つけ汁の方そのものは 他店の濃厚豚骨で時々遭遇する「だだ辛さ」 も皆無なので、そのしよつぱさやはり一味から來たものなのだらうと推察された。
あとはつけ汁にユズの小片が沈んでゐるのだが、それが麪に絡んだ際に 香りと苦味 が氣にならないでもなかつた。麪の上にスダチやレモンをごろりと載せた店の樣に、即刻除去しなければ味がそれに支配されてしまふ、といふ程のものではなかつたのだが・・・

以上により味の骨格を成す麪及びつけ汁のダシ、タレにつひては大筋で不滿は皆無であつたものの、細部にはまだ改善の餘地があつたので、この時点での私の評價は ★★★★ +α であつた。

しかし!!!!!

その2週間後、再訪した時には 上記の問題点は解消されてゐた のだ!!
一味の刺激、柚子臭さはともにマイルドになつてをり、豚骨ダシの美味さがより一層引き立つてゐた。勿論、チヤーシウやメンマがしよつぱく感ぢらるることも無かつた。

「無鉄砲」「豚の骨」について語らるる時によくネタにされることで、食べた後歸らうとすると、店員が駐車場まで追いかけて來て感想を聞く、といふものがある。
そこで聞かれた感想は、その場でオシマイなのではない。決してその意見はムダにはされづ、ちやんと今後の味にフイードバツクされてゆくのだ。
このクラスの行列店で何もそこまでしなくても、と思はるる方もをらるるかも知れない。實際、これだけ個性的な豚骨スープなれば、それだけで苦手に感ぢる人も少なからづゐることであらう。しかし店主・赤迫氏はそれでは物足らづ、 店に來た客全員が滿足出來る ことを 夲氣で 目指してゐるのだ。
それは例へば 某滋賀の我儘なラーヲタ*1 が行列に並んだのを發見すると、その 常人からは少々(かなり)乖離した 特殊な味覺 に合致させるべく、厨房ではおもむろに 背脂 を練り始める、といつた噂がまことしやかに流れる程だ。

穿つた目で見れば、誰にでもいい顏がしたい 八方美人的 な所作に冩るかも知れない。亊實、客(或いは近しいラーヲタども)の意見を取り入れ過ぎるがあまり、味が迷走してしまつたラーメン屋も今迄に私は幾つか見て來た。
しかし、この「豚の骨」に關しては、その懸念は無用だらう。
味の屋台骨が揺るがすことなくあくまで細部の微調整で對應し、その過程を次に生かしつつたゆまぬリフアインを繰り返して日一日とブラツシユアツプされてゆくのだ。

前囘、ら〜麺「なかにし」のところでも書いた*2が、赤迫氏とて毎囘、 最初から完璧なものを作れてゐる譯ではない 。氏が凡百の店主と違ふところは、その後客の滿足度がどうであるかこと細かに注意を払ひ、よしんば味に對して否定的な意見が出たとしても それが如何にネガチヴな意見であれ單なる誹謗中傷 とは捉へづ どこを改善すべきか、につき眞摯に取り組んでゆく姿勢そのものであらう。
かくして氏が新しいものに挑戰した時は、提供當初幾つか課題点があつたとしてもそれらは随時修正されてゆき、最終的には見違へる程までに完成度が高まつてゐるのである*3 *4


月 旧一的評價;★★★★★ !!!!!

追記1
これだけの濃厚なつけ汁に麪300gを合はせたのに、食べ終わつてからの胃のもたれが全く無いのが不思議であつた。
同ぢ濃厚なつけ麪である「ラーメン軍団」の「重厚つけ麺」での「美味かつたんだけど、體調が良くないと當分これ喰へねえ!」な膨滿感との差は、一体どこから來るのだらう?

追記2
一囘目はオプシヨン無しで ちう悶 www したのだが、今囘は小ライス(50圓・魚粉つき)を試してみた。
殘つたスープに御飯を入れて雜炊風に食するパタンは嘗て「ぺーぱん」「黒門」「ろおじ」等で經驗があるのだが、鍋の最後を雜炊で〆るのとは違つて炭水化物(麪)の後に炭水化物(飯)を重ねてしまふことになり 「何を食べてゐるのかよく分からない状態」 になつてしまふのが常だ。
それにつひてはこの「豚骨つけ麺」でも例外ではなく、特に味がヘンといふ譯ではなない・・・といふか、 どちらかといふと美味い ことは美味いのだが、まあ別に 麪で腹が膨れてゐるとこにわざわざ追加で御飯を喰ふ必然性はない かなあ、といふのが正直な感想だ。
加へてこの御飯によつて、折角のつけ麪の感動がややもすれば薄れてしまふ樣にも感ぢられた。
この「豚骨つけ麺」の純粹性を十二分に味はひたいと思ふのなれば、オプシヨンはせいぜい麪の増量にとどめておくがよからう。

追記3
眞の美味さといふものは 高價な食材を使つたり、奇をてらつたアプローチをしたりすることから生まれるのではなく 、今そこにある、 極めてオーソドツクスなものをとことん磨き上げてゆくことからこそ作り上げることが出來る のだ、といふことを今囘痛感させて頂いた。
逆に言ふと、 オーソドツクスなものをどれだけ美味く仕上げることが出來るか 、が店主の力量を如實にあらはしてゐる、と言へるだらう。


*5 *6 *7
*8 *9 *10 *11 *12