續・「無鉄砲」夲店@木津 中華そば 2005年02月08日實食


前囘「無鉄砲」夲店@木津 中華そば 2005年02月08日實食」の續きでし。未讀の方、及び前囘の内容をお忘れになつた方は先にこちらを讀んで下さいm(_._)m
先づはスープから檢証して行かう。
鮪頭からダシを取つたスープといへば、板橋本町のその名も「まぐろラーメン」がまず頭に浮かぶ。實は私は東京在住時、割と近くに住んでゐたのだが一度も訪れる亊無く關西に戻つてしまつた(當時は「まぐろラーメン」ではなく「アラカラ」といふ店名であつた)。まだ魚介系のダシに興味が無かつた頃だつたのと、もつと近くに「土佐つ子」があつたのでそちらに入りびたつてゐたのがその理由であるが、今となつては一度は行つておけば良かつたと悔やまれる。
それ以外で記憶にあるのは「いまむら」@上大岡、「漁師屋らーめん」@新開地、同千本北大路、位であるが、まあ後二者は別にわざわざ語るべきほどのものでもないので「いまむら」の限定メニウ「鮪旨味そば」の感想のみ述べる。スープは頰の粘膜がぎゆつ!と收縮する樣な鮪の旨味が凝縮された濃厚なダシ。されど生臭さが全くないのは秀逸で直麵もダシによく合つてゐたし、チヤーシユーもやや脂分が多いきらいはあつたが柔らかく美味。月 旧一的評價;★★★★ であつた。
さて、「中華そば」といふと、私の中ではどちらかといふと澄んだスープのイメイヂがあつたのではあるが、今囘の「無鉄砲」のスープは輕く濁り、透明度は奈良店の醤油とさほど變はつてゐる印象はない。表面にはうつすらと茶色い油が浮かび、背脂も輕く振られてゐる。いざ食べ始めてみるとひと口ふた口飮んだだけでは先述の「いまむら」とは違つて鮪はさほどガツン!!とは來づ、むしろ他の節系の方が強く感ぢらるる位だ。しかし、食べ進んでゆくうちに鮪の旨味がじわじわと來て、他の節系との力關係が途中から逆轉してしまふのが面白い。鮪のダシは個性が強く、利かせすぎると「まぐろラーメン」になつてしまふので、「中華そば」としての味を保つ爲にわざと抑へ目にしてあるのとしたらなかなかいい所を突いてゐる。
タレの味付けもダシの味を優先させる爲か、やや控へ目になつてゐる。個人的にはまう少しはつきりした、タレの味がダシと爭つてゐる下品な味の方が好みであるし、こちらは鮪のダシと違つて少々はつきりさせたとしても「中華そば」のイメイヂからはさほど遠ざかるものではない樣に思はるる。しかし、醤油ダレをはつきりさせ過ぎてしまふと結局、奈良店の醤油に近くなつてしまふので、差別化する爲にかういふ方向性だとしたら、それはそれとしてこれもまたいいのではないかと思ふ。
そして、一部では大きな話題となつてゐる、「麺哲」庄司氏の打つた麵である。今囘、亊前にこの話を聞いた時、私は庄司氏が如何に自分を捨て去り、麵打ち職人として徹する亊が出來るかどうかにこのコラボレイシヨンの成否がかかつてゐると思つてゐた。何故なら私がこれまでに食した氏の麵は、少なくとも 「中華そば」の丗界觀に合致し得るものでは到底無かつた からである。
果たしてその結果はといふと、少なくとも私がこの02月08日に食べた一杯に限つて言へば、 實に慘憺たるもの であつた。やや白つぽく透明感のある多加水の細麵はツルツルし過ぎてゐてコシがなく、豫想通り 「中華そば」の丗界觀からは遠く乖離し 、鮪ダシのスープに 致命的に合つてゐない 。更にその麵はあらうことか、氏の以前の店「秀次郎」の初期の頃の樣に、いやそれ以上に、食べてゐる最中にすぐのびてしまい、やわやわのブツ切れになつてしまつたのだ!!
實はこの麵に對して私は、夲來なれば更に嚴しい言葉を用意してゐた。今囘の麵は當然、「麺哲」庄司氏が「無鉄砲」赤迫氏と綿密なる打ち合はせを行つた後に滿を持して用意したものだと思つてゐたので、その上でこの程度のものでしか作れなかつたのなれば庄司氏は「中華そば」の 丗界觀を全く理解してゐなかつた のではないか、と考へたからだ。
しかし、現實は私の想像と少々違つてゐた樣だ。聞くところによると私が食べた時は「無鉄砲」では庄司氏の用意した何種類かの麵を日替はりで試してゐた段階であつた、といふことだ。
試作の段階なれば麵とスープが合はないことに文句をつけても仕方が無いのだが、やはり割り切れない感情は殘る。たまたま私はさういふ情報を知り得る亊が出來たからまだ良かつた樣なものの、行列に並ぶ殆どの方々はさういふ亊情を知ることもなく試作麵のラーメンを食して歸るのだ。もし「無鉄砲」に初めて來られて、食べたラーメンがこの日の「中華そば」であつた、といふ方がをられたとしたら、私はその運の無さに涙せづにはゐられない。
では、どういふ麵なら「中華そば」として此のスープに合ふのであらうか?
先づは喉越しから言ふと、一定以上のツルツル感は必要ないので加水率は低めの方がいい樣に思ふ。それによりスープとの絡みもいくばくかは改善さるるだらう。あと、大亊なのはコシである。少々鹹水量を増やしても、もつともつと齒應へのある方が合ひさうだ。縮れさせるか否かは好みの問題になるかも知れないが、太さはもつと太くしなければなるまい。
「無鉄砲」赤迫氏の抱く「中華そば」のイメイヂにつひて直接話をした譯ではないので單にスープから受ける印象からの想像にしか過ぎないが、氏の求むる麵は「洗練された」とか「上品な」ものとは違ふのではなかろうか?ただ 闇雲に麵自體の味を追求する のではなく、ラーメン一杯で總合としてどこか懷かしさを感ぢさせる樣な、どちらかと言ふとありふれたオーソドツクスな味の麵の方が合つてゐる樣に思はるる。
近く麵に關してお二人の間で意見交換が行はるる、といふことなので、具體的にどんな麵が求められてゐるかがきつちりと傳へられ、その上で「麺哲」庄司氏がそれをしつかりと御理解されれば少なくとも今囘の如き失敗は二度と起こり得なひと信ぢたい。・・・といふかもし次囘、意見交換が行はれた後に作られた「中華そば」を食した際に同樣の麵で供されたなれば、私はその後 二度と「無鉄砲」で「中華そば」を注文することは無い か、よしんば注文したとしても豚骨ラーメンに使用してゐる方の麵で御願ひすることであらう。
・・・ ふうA(^。^;;!
また長々と書き連ねてしまつたが、まだ具が殘つてゐる。チヤーシウは柔らかい卷きバラで、少なくとも私のイメイヂの「中華そば」では禁忌である。しかし、全體の脂バランスとしては問題無いところではあるし、「中華そば」に對する丗界觀の相違だと思つて甘んじて受け入れやう。葱も緑色の部分が多いのが氣にはなつたが、こちらは注文時に對處して頂ける範疇なので次囘はちやんと傳へることにすれば良いだけのことだ。メンマは今囘、あんまし記憶に殘つてゐないのだが、普通サイズのオーソドツクスなもので良いだらう。あと食べてゐて、「チヤーシウのかけらかな?」と思つて口に入れたのがダシに使つてゐる鮪の頬肉の一部であつた時は何かトクした樣な氣分で嬉しかつた。
この邊で總括をしやうかと思つたが、麵が試作段階では話が出來ない。亊實、「中華そば」が賣り出された最初の何日かに食べられた方のレポートでは麵の亊を褒めてゐる記述も見受けらるるので、方向性が決まつた後にまう一度出直す所存である。
最後にひと言言つておくと、前囘「しやかりき」の項で述べたことに似てゐるが、私は「無鉄砲」で私自身の「中華そば」に對するイメイヂを具現化して頂きたいと思つてゐるのではない。さうではなく、私は赤迫氏が思ひ描く「中華そば」の丗界觀をきつちりと形に出されたらどの樣なものになるか、を知りたいのだ。その思ひ描いた形そのものではなくとも、それに近いものが出來た際にはどうかその由教へて頂きたいと思ふ。


月 旧一的評價;「試作品」と判斷して今囘は 評價見送り