「ラーメン軍団」@一乗寺 重厚ラーメン 2007.04.08/05.11/7.06 實食


重厚ラーメン(初期ヴアージヨン) 600圓

此の「重厚ラーメン」は進化中である。店主自身、ブログで 「満足の状態ではありません*1 と激白してゐるくらいだ。
よく「無鉄砲」のラーメンに例へられる「重厚」だが、初訪時私は「無鉄砲」といふよりは「銀閣」を濃厚にした樣な印象を受けた。此についてはとしむね氏も「ひとりごと。」で同樣の意見書いてをられた*2が、「銀閣」を連想させたのは丼の色もさることながら、スープが豚骨オウンリーではなく鷄ガラも使用してゐることが關係してゐたのではなからうか。
その時はダシには滿足出來たものの、タレが今ひとつ決まつてをらづグルタミン酸不足が顕著であり、またツルツルした食感の麪もスープと合つてゐない樣に感ぢられ、全體としてはまだまだ未完成な印象であつた。
しかし2囘目、某所の日記で何人かが「かなりコッテリ」「超濃厚」になつてゐる、と書いてをられたのでG.W.明けに再訪してみると・・・


重厚ラーメン(現行ヴアージヨン) 600圓

濃ひいいぃっぃぃいいいっつっつっつつっっつ!!!!!!!!!!
嘗て、もと天氏*3が、ありし日の天下一品を「スープに箸が立つ」と評してゐたが、まさにその表現がぴつたりな、思ひつ切り箸が立ちさうな濃厚さであつた。しかもただ濃厚であるだけではなく味のバランスも改善されてをり、前囘感ぢたグルタミン酸不足も殆ど氣にならないレヴヱルになつてゐた。初訪時の「銀閣」を濃くしただけ、みたいな印象とは全く別物で、この日のスープは「無鉄砲」に匹敵するほどであつた、と言つても過言では無からう。
また麪とスープのマツチングの惡さも解消されてをり、超濃厚スープがずつしりと麪にまとわり着いて來た。此は後から知つたことなのだが丁度麪が新しくなる、といふアナウンス*4があつた直後の訪問であつたので、もしかすると新しい麪に切替へられてゐたのかも知れない。
あと他所で書かれてゐないのが不思議であるのだが、實は「重厚」のスープは ニンニクとの相性が拔群 なのだ。
最近、私が食した中で、ここまでニンニク映へするスープは珍しい。凡百のスープなれば不用意にニンニクを入れると味が支配されてしまい、元の味が丸つきりわからなくなつてしまつたりする危險性があるのだが、此の「重厚」は心配御無用。ニンニクによつてその美味さが何倍にも増幅されるのだ。
ただ「ラーメン軍団」ではニンニクがあらかじめカウンタに用意されてをらづ、いちいち注文しなければ出て來ない。メニウには「コショウ・ニンニク・酢・一味が必要な方は、お申しつけ下さいませ」と書かれてゐるものの、實際食べてゐる途中で注文したいと思つても、厨房でバタバタと忙しさうにしてゐるときに聲をかけるタイミングはなかなか難しい。それ故、ニンニク等が慾しい、と思つても注文しそびれてしまつた方も多いのではなからうか。ニンニクに關しては、鮮度の高い状態で供する爲にさういふシステムを取つてゐるのではないかと推察さるるのだが、「ラーメン荘 夢を語れ」の「ニンニク入れますか?」ではないが「重厚」注文時に「ニンニクは如何致しますか?」と、ひと言聞いて頂ければ、まう少し此の素晴らしひハーモニイを味わふ亊が出來る人が増える亊であらう。
その後、濃度を少し落とした、との話を聞いて再訪してみたが、なんのなんの 十二分に濃厚 であつた。しかし、特筆すべきはその濃度ではなく、これだけ濃厚なのに完食しても殆ど胃にもたれない、といふ点だ。最近、脂肪消化能力に蔭りが出て來た私なれば、現在の濃度くらいが丁度ベストバランスに感ぢらるる。
具はチヤーシウと葱だけのシンプルなもの。チヤーシウについては以前、「ラーメン軍団」掲示板でその匂ひのことで話題になつてゐたことがあり、「腐つてゐるのではないか?」といふ意見まであつた。實際に試してみると確かに獨特の ケモノ臭さがある ことは否定出來ないが、それは肉自體の匂ひであつて、決して腐臭ではない。しかし、此の匂ひを不快に感ぢる方がをらるるのもまた亊實なので、チヤーシウを作る際の臭ひ對策につひては今後、一考の餘地があると考へる。
ただ私は、どちらかといふと匂ひよりも 脂身の多さ の方が氣になつた。先程完食しても殆ど胃にもたれない、と書いたが、それでもスープが濃厚なラーメンに脂身の多いチヤーシウが載ると、やはりくどく感ぢられてしまうのだ。脂身の少なひモモ肉か、或ひは現在の厚さよりももつとペラペラに薄いものの方が、スープとのバランスは良くなるだらう。
あと此の店のラーメンでよく話題に上るのは 具の貧弱さ である。t_cognac 氏も書かれてゐる通り*5 *6、確かにヴイジユアル的にもあと一品何かが載つてゐた方が良いだらう。
しかし、何を載せるか、といふのは非常に難しい問題だ。t_cognac 氏は 「メンマなり、キクラゲなり、海苔なり」 と書いてをられたが、先づ第一にメンマは濃厚豚骨には合わない。正確に言ふとメンマが合わない、と言ふよりは、一般的なメンマの味付けが濃厚豚骨向きではない、といふことだ。メンマは味が薄いとどうしてもその臭味を感ぢやすくなつてしまふので、いきおい濃い目の味になりがちだ。同ぢ豚骨でも濁らせない透明なものならまだしも、徹底的に煮込んだスープに載せると些かしつこく感ぢられてしまう。かの「無鉄砲」では豚骨スープに合はせるべく、その味付けに工夫をこらしてメンマを仕込んでゐるといふことだが、確かにメンマのみを食してみると、かなりいい出來だ。しかし、ラーメンを食べてゐるときにはその味がかすんでしまい、しつこくこそなりはしないがその仕込み過程の苦勞の割に報われてゐない樣に感ぢらるる。
續いてキクラゲだ。個人的には濃厚豚骨には「アクセント」としてのメンマではなく、「箸休め」として、やはりキクラゲが一番合ふと思つてゐる。それ故「重厚」に載せて頂くとしたらそれ以外考へられないのだが、何故か關西ではあまりウケが良くない。一般の方のみならづ、數多く食べ歩いてをらるるラーヲタ共の中にも、當「麪面日記」の波平氏をはじめとしてキクラゲ不要論者が多いのは憂ふべきことだ。
まあ一般ウケもさることながら、キクラゲを載せてしまうとどうしても「九州のラーメン」というイメイヂがつきまとつて來るので、さういふ固定觀念で見らるる亊を避ける爲には、敢へて載せるべきでは無いのかも知れない。
だからといつて既存の具では無いものを持ち込むことには反對だ。例へば「あきひで」の山くらげ、何故キクラゲではなく山くらげなのか、それを擇んだことによるアドヴアンテイヂはどこにあるのか、今もつて全く不明である。今迄に無かつたものを新たに持ち込む際には、 既存のものよりそちらの方が勝つてをり、それでなければならない、といふ必然性 が必要であらう。
具に關してはまだ改善の餘地が殘るが、それを差し引いても此の「重厚ラーメン」は現在、京都市内で食することの出來る豚骨ラーメンの中では 文句無しにトツプクラス であることに間違ひはない。ただし、ひと言つけ加へるとしたら、今後の課題は此のレヴヱルのスープをどれだけ安定して供給出來るか、であらう。季節、天氣、材料のブレ、客の人數・・・それらによる違ひを乘り越へて、いつでも同ぢ味が出せる樣になること。それが眞の一流店への切符となるのだ。

月 旧一的評價;★★★★

【追記】上記の通り「重厚ラーメン」の味は2007年のG.W.を挾んでがらりと味が變わつてゐる。「ラーメン軍団」に行かれたのが2007年5月以前の方は、是非まう一度この「重厚」を試して頂きたい。