【マニヤー】續・綿麺@松原【必食・夜這ひ!】2006.02.16實食

昔は一年の半分近くを家に歸らづともぴんぴんしてゐたものだが、さすがに最近では當直が二日續くと身體にこたへる樣になつて來た。
その二連直から解放され、鬱陶しくのびて來た髪を「ハシダ・メン」迄遠征してカツト。折角數十kmも高速飛ばして來たのだから、と普段なかなか行けない大阪南部のラーメン屋に、といふことで最近噂をよく聞く「綿麺」を試すことにする。
店で波平氏とごうりう。「からあげが美味い」との情報があつたので、先づは「からあげ(小)」と「ぎょうざ」をちう悶。
ニンニク醬油風味の衣で揚げられたからあげは、表面に焦げが入つてクリスピイ。鬼ちく・・・いや、亞米利加人が憙びさうな食感だ。一方、ぎょうざの方は味はまあまあだが最近よくみかけるのタイプで餡がフードプロセツサで挽かれてゐるのか、ぐじやぐじやして 食感は決して良くない 。まあここはラーメン屋さんなのだから、サイドメニウにまでそこまで高度な技術を求めても仕方あるまいが。
この近邊を根城にしてゐるたむたむさんが途中から亂入し、ラーメンに移る。「当店イチオシ」とのことなので「和風とんこつ。」を ちう悶 www
スープは節系が香り、輕く乳化した豚骨と合はせられたダブルスープ。ヱグみも無く、また豚骨成分も出過ぎることなく兩者の配合バランスはなかなか良い。
しかし、ダシが不足してゐる譯ではないのに全體として 「薄い」印象 があるのは否めない。此のテのダブルスープで私が今迄に食した中で最高峰に位置する「彩色らーめんきんせい」の「限定和風豚骨」(和風豚骨 2005.06.10實食)と比較するのは酷だとしても、今ひとつ「思ひ切り」が感ぢられないのだ。
原因のひとつは「節」の選擇であらうか。確かサンマ節を使つてゐる、とどこかで見た記憶があるのだが、サンマ節の欠点は広島の「ふじ☆もと」(らーめん「ふじ☆もと」@通販「まぐろだし」醤油とV.S.「さんまだし」醤油 2005.06.24實食)の如く確信犯的に豪快な使ひ方をしないと、そのダシの出方に比べてどうしても後味がさらりとし過ぎてしまふところにある。サンマ節のはしりである、かの「麺屋武蔵」でも、初めて訪れた時は 「無化調で頑張ろうとしてゐる努力は買へるが、今ひとつぱつとしない味」 といふ印象であつた。
もしかすると「こつてり」の「とんこつらーめん」に對する「あつさり」の位置づけとして、わざと薄い目に感ぢらるる樣にしてあるのかも知れない。しかし、 「あつさり」と「薄い」は似て異なるものだ 。例へ「あつさり」でも味の構成要素さへ滿たされてゐれば、食後に物足りなさが殘ることはない。
その後「武蔵」は蝦油との運命的な邂逅により飛躍的な進化を遂げ、一時代を築き上げることが出來た。「綿麺」でも嘗ての「麺屋武蔵」の蝦油に相當する樣な、何らかのプラスα要素の登場が望まれるところだ。
この店の麵は細麵と中太麵があるさうだが、此の「和風とんこつ。」は中太麵と決まつてゐる。最近、麵を客に擇ばせる店がちらほら見受けられるが、それは一見客のことを考へてゐる樣に見へても、實際は作り手側がスープと麵の相性を考へて提示する、といふ努力を放棄して 素人の客に丸投げ してしまつてゐるだけの 責任感の無い、極めて不誠實な行爲 である。またさういふ店に限つてどちらの麵もスープに合はなかつたりするから全くどうしようもない。
その加水多い目の中太直麵はツルツルして喉越しは良いが、素直過ぎて もちもち感に欠ける 。澄んだスープに合はせるのなればまだしも、濁りが入つて比重が重い目の此のスープに合わせるには、加水を抑へてスープとの絡みを良くし、もちもち感を出した方がいいであらう。
チヤーシウはウデ肉で、ハムの樣な食感と匂ひでややパサついた印象がある。何も考へづに 脂臭いバラ肉 を入れる店よりはマシだとは思ふが、ラーメンから浮いてゐるのは確かである。例へば「天天有」の樣なモモ肉のしつとりしたタイプのものが合ふのではなからうか。
彩りの爲に載せられたのであらうが、 カイワレは全く不要 。味にしても食感にしても マイナス要素にしかなつてゐない
全體の印象として、 改善すべきポイントこそ多々あれど致命的な欠陥は無い 、そこそこよく出來たラーメンであつた。細部をきつちりとブラツシユアツプしてゆけば、まだまだ成長してゆけるだらう。


月 旧一的評價;★★★


追記1
ひとつ氣がかりなのは、今後自家製麵を始める、といふことだ。まだスープにも改良の餘地がある段階で自家製麵にまで手を擴げて大丈夫であらうか?
確かに現在の麵は 今ひとつの出來 である。しかし、自家製麵でなくとも麵屋さんとの二人三脚でいい麪を作り上げて行つた店として、前出の「麺屋武蔵」、獨特の黒小麦を使つた大阪の「一信」、そしてこの一年で急激な飛躍を遂げた京都の「麺屋しゃかりき」等の良き前例がある。
また最近の關西の自家製麵に多い、プライム・ハードにナトリユーム鹹水を合はせた プラステイツキイな食感 の麵は、多分「綿麺」のスープには致命的に相性が惡い。
それを踏まえた上で、他人の模倣ではなく 「綿麺」のスープの爲の「綿麺」ならではの麵 を一から作り上げてゆくには相當な勞力を要するであらう。

追記2
此は波平氏も書かれてゐるが、上が開いた淺い丼の形状は澄んだ塩ラーメン等なら良いのだが、「綿麺」のラーメンには今ひとつ合つてゐない。濃厚豚骨系やこのタイプのスープにはごく普通の形状の方が合つてゐるので、餘裕が出來れば改善されると良いであらう。

綿麺