三者三樣

不自然な緑色の蕎麦、三種。撮影条件が違ふので直接比較は出來ないが、緑色の素はそれぞれ違ひます。

一番上は かんだやぶそば」@神田
昔は蕎麦の質が落ちる夏場、せめて色だけでも新蕎麦の雰囲氣を出すべく莖をすりおろしたものを混ぜて打つたさうだが、現在はクロレラで色づけしてあるらしい。それが味や香り、或いは喉越しの向上に關与するなれば私は容認するのだが、そのどれもが今ひとつである以上、此の緑色はただの欺瞞にしか過ぎない。


眞ん中は 」@麻寺仁王門前
上の 「かんだやぶ」 よりは明るい目の緑色で、實際見た目は鮮やかなヱメラルドグリン色、といふ印象であつた。給仕のおねえちやんは「甘皮の色です」と言ひ切つてゐたが、確かに蕎麦の甘皮は緑色ではあるものの、此の蕎麦の色を出さうと思ふなれば甘皮の部分だけで打つか、或いはそれなりの色を持つ何かを添加しなければここまでにはならないのではなからうか?少なくとも私が今迄の人生で食した中では蕎麦だけでこんな色を打つてゐる店を見たことが無い。非つ常~~~~~~~~~に疑はしいのだが、もしかしたらさういふこともあるのかも知れない、と思つておかう。


で、一番下。「茶そば」に見へるかも知れないが、さにあらづ。MIGさんのコーナーぢやあないんで答へを書ひてしまふと此は「よもぎそば」。私は「かわりそば」の類は嫌いなので蕎麦屋でちう悶wwwすることは先づ無いのだが、此は實は加賀の鴨料理のお店 山ぎし で、「治部煮」の作り方を取り入れた「鴨じぶすき」の最後に出て來たもの。野鴨の脂身はしつこくないんで少々量を食べても牛脂の樣に胃にもたれることはあまり無いのではあるが、最後に頂ひたこのよもぎそばは夲當にスツキリとした清涼感があり美味かつた。
かように蕎麦の緑色と言つても色々なパタンがあるのだが、私の知る限りでは、一番綺麗な緑色だつたのは 「ふじおか」@黒姫高原 の何とも形容のし難い透明感のある緑色である(下の冩眞)。


「ふじおか」@黒姫高原の蕎麦


ライテイングひとつで色が變はるので冩眞で再現するのは(特にデヂカメでは)難しく、「蕎麦遊楽」でもあまり綺麗に冩つてゐないのが殘念だ。
蕎麦とはその素材に對する純粹性が追求さるる部分の多い食べ物だと私は思つてゐる。勿論、ツユや他の一品モノにはどれだけ手をかけて貰つても良いが、蕎麦そのものに於ては小賢しい誤魔化しなどはせづに、堂々と勝負して頂きたいものである。


月 旧一