國産インデイア・ペールヱール三種競演!! by 月 旧一

つい數年前まで國産地ビイルでインデイア・ペールヱール(以下I.P.A.)は私の知る限りでは殆ど存在しなかつた。99年に訪れた 「十勝ビール」 では併設のビヤーレストランで直接飮めたのだが瓶での販賣はしてをらづ、自宅に取り寄せて飮めるものはせいぜい 「太閤エール」 があつた程度だ。

しかし、海外に目を向けると「レツドフツク・IPA

といふコクとキレ、そして後味としてのホツプの苦味が高次元でバランスされた、「これぞI.P.A.のリフアレンス!!」といふ逸品がある。
それを輸乳元の オルカ・インターナシヨナル から購乳すると送料・消費税込みで1夲360圓程度、4ケヱス(96夲)まとめ買ひすると割引されて何と1夲290圓弱になつてしまふ。だからわざわざ高くて味の保障の無い國産I.P.A.に手を出す必然性も無いのだが、もしかするとそのリフアレンスを超越した、今迄經驗したことの無い樣な味に巡り會へるかも知れない、といふ期待感から幾つかを試してみた。
今囘、三種類の國産I.P.A.を比較する機會があつたので、ここに報告する。

左より「いわて蔵ビール」(岩手)
http://www.sekinoichi.co.jp/03beer/index.html
「18世紀のインディアペールエール」(ヤッホー・ブルーイング・長野)
http://www.rakuten.co.jp/yonayona/111011/707197/
「帝国IPA」(ベアード・ブルーイング・靜岡)
http://www.bairdbeer.com/j/index.html

先づは色の比較である(トツプ冩眞)。折角の比較檢討なのに冩眞がピンボケになつてしまつたのは殘念至極。されど色の違ひにつひては大體はお分かり頂けるであらうか。「いわて蔵…」「18世紀の…」が同ぢくらいの濃さで「18世紀の…」がやや赫つぽく、「帝国IPA」がやや色濃い。あと此の冩眞では分かりにくいが、「いわて蔵…」「18世紀の…」に比して「帝国IPA」は泡の目が荒く、泡持ちが惡い。
續いて味の比較にうつる。
「いわて蔵ビール」の第一印象は、ひと言で言ふと「ドライ」である。
能書きには「ホップを通常ペールエールの4倍、麦芽を1.5倍にし醸造した」とあり、勿論某社の何とかドライの樣に味も素つ氣も無いものではなく、しつかりとホツプが利いた上でのドライさだ。しかし麦芽が1.5倍使はれてゐる割には味はひにふくらみが欠ける爲、實際のパーセンテイツヂ(約6%)よりアルコールが強く感ぢられてしまふ。ただそれは美味いマズいといふのではなく、マイスターの方針としてさういふ造りをしてゐるのだらう。
「18世紀のインディアペールエール」の特徴は、何と言つてもホツプの苦味がこれでもか!といふ程に利いてゐることだ。
ビイル通の方には釈迦に説法だらうが、「インデイアペールヱール」の名前は18丗紀の大航海時代英國船が植民地のインドまでの航路で赫道を通る爲、ビイルが傷まない樣にアルコール度數を高め、且つホツプを大量に使用して作つた亊に由來する。その量は現在のビイルの約7倍であつたといふことであるから、それだとさすがに苦すぎて商品としては通用しないであらう。それ故、此のビイルは「18世紀に賞賛されていたその強烈な味に敬意を表しつつも、日本のビールファンが飲みやすいように苦味も程よく抑えてアレンジした」といふことだ。
しかし、決して一般顧客におもねることなく苦味を出し、またそれをしつかりと受け止めるふくらみのあるボデイを持つてゐるので、高目のアルコール度數(約7%)を全く感ぢさせないのは立派である。
「帝國IPA」は前二者と比較するとやや分が惡い。その最たる原因は、先程も少し触れたが泡持ちの惡さだ。
實際にホツプの苦味やコク等は他のI.P.A.に引けを取らない程のものは持つてゐると思はるるのではあるが、その炭酸の弱さ及び泡持ちの惡さ故に、飮んだ際に氣が拔けてゐる樣に感ぢられてしまふのだ。
此の欠点はI.P.A.のみならづ、此のブルワリの製品全てにつひて言へることなので、折あらば改善を御願ひしたい。

・・・といふ譯で、國産I.P.A.三種類を比較してみたのだが、豫想以上の出來に驚いてしまつた。個人的にはホツプの苦味が強くてふくよかな味の「18世紀のインディアペールエール」をイチオシとするが、それはまさに好みの問題で、ドライですつきりした味が好みであれば「いわて蔵ビール」を擇ぶが良からう。實際オールドスタイルにこだわるなれば、長期間の航海の間にはビイル内で生きてゐる酵母が糖質を消費し尽くしたであらうから、その時代のI.P.A.とはかなりドライであつたのではないかと思はるるので、「いわて蔵…」のドライさの方がその時代の味に近いのかも知れない。

私は純粹に味のみを評價すべく、値段の違ひは無視してゐるのだが、コストパフオーマンスも考慮さるる方の爲に參考までに價格を比較してみると、
「いわて蔵ビール」480圓/夲(330ml)
「18世紀のインディアペールエール」6720圓/24夲=280圓/夲(350ml)
「帝国IPA」417圓/夲(360ml)
「レツドフツクIPA」7656圓/24夲=319圓/夲(355ml)
・・・となつてゐる。

「もつと美味ひI.P.A.を知つてるぞ!!」といふ方は是非とも情報頂きたく存じますm(_._)m