「麺哲」@豊中 TKO 2005.08.18(木)實食

背脂ぞむびーと待ち合はせして「麺哲」に。
夲日は歸りの運轉をぞむびーに御願ひしてあつたんで、心おきなくハートランドを空ける。冩眞は「神助」を目指した、といふSPF豚のレアーチヤーシウ。
よくSPF豚のことを「無菌豚」と誤解してをらるる方が多いのでひと言言つておくと、 SPF豚は決して無菌ではない 。「日本SPF豚協会http://www.j-spf.com/)」によると、SPFとは(Specific Pathogen Free)の略。譯すと「特定種病原体除去」とでもならうか。排除対象疾病はオーエスキー病、豚流行性下痢症、伝染性下痢症、萎縮性鼻炎、マイコプラズマ肺炎、豚赤痢サルモネラコレラ・スイス感染症トキソプラズマ病だけであり、このうち人間に感染するのはトキソプラズマのみ。つまり、SPF豚とは 食べた人間に感染する病氣を排除したのではなく、豚自身の傳染病を排除した豚 、と思つて貰へればいい。
勿論、それによる副次的効果として抗生劑の使用が抑制されてその殘留量が少なくなつたり、健康に育ち肉付きが良くなつたりといふ恩惠もあらう。協会のペーヂでは抗生劑の使用が少ない爲に健全な腸内細菌叢が構成され、腸内における短鎖脂肪酸の産生量が抑制されることが「期待され」、結果として肉の脂肪分の臭みが少なくなるのではないか、と説明してゐる。
しかし、 生食しても良いとはひと言も書いてはいない 。いや、「Q&A質問コーナ」では「生食できるか?」の問ひに SPF豚肉といえども加熱調理は必要」 との囘答をしてゐる。
さて、どうして牛肉は刺身、タタキ等生食が一般化してゐるのに、豚肉はよく火を通す樣言はれて來てゐるのであらうか?
先述のトキソプラズマは人間にも感染するが、妊婦が感染した際に胎児に影響があるといふことと免疫状態の低下した人に感染した場合が問題であり、それ以外の健康な人に感染した場合は殆ど症状はあらわれない。
やはり一番の問題は 寄生蟲 であらう。
牛に寄生する無鉤条蟲は人間に寄生してもせいぜい下痢をしたり、時々お尻からきしめんの樣な蟲體のびらびらが出て來て氣持ちが惡い程度で大した影響は及ぼさない。豚に寄生する有鉤条蟲も、人間が豚肉からその幼蟲(嚢蟲といふ状態で筋肉内に寄生)を攝取して、身體の中で成熟する分には無鉤条蟲と一緒である。
しかし無鉤条蟲と違つて有鉤条蟲の厄介なところは、その卵が、人間の膓内で孵化することがあるといふことだ。(無鉤条蟲では蟲卵は體節ごと糞便中に排泄され、人間の膓内で孵化することはない)孵化した幼蟲は、豚では膓管を通り拔けて筋肉内に移動して先程の嚢蟲といふ状態になるのだが、人間の膓内で孵化した場合は筋肉内のみならづ、肝臓や腦内、眼球に移動することもあり、腦内に移行した場合はてんかん等の神經症状が出たり、眼球で嚢蟲となつた場合は失明したりする可能性がある。
他の問題点としては昨年、鹿肉からの感染ニウスで報道されたので覺へてをらるる方もおいでだらうが、E型肝炎の感染がある。
「動物衛生研究所」の「豚とE型肝炎ウイルス」
http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/HEV/swine_hev.html
によれば、2000〜2001年に全國から集められた各年齢層のブタ血清1271例について行つた抗体調査では、じつに約66%がE型肝炎抗体が陽性であつたといふことだ。
・・・とまあかういふ風に書いて來ると、豚肉の生食がとてつもなく危險に思へて來るかも知れないが、あくまで此は「可能性」としての問題、である。
例へば有鉤条蟲については、「日本SPF豚協会」では排除対象疾病ではないものの監視(モニタリング)対象疾病として豚繁殖・呼吸障害症候群、豚胸膜肺炎、内・外部寄生虫が擧げられてゐるし、と畜場法12条では有鉤嚢虫症、無鉤嚢虫症が全身に蔓延してゐればと殺禁止、解体禁止、全部廃棄、全身に蔓延してなくとも旋毛虫病、有鉤嚢虫症、無鉤嚢虫症があれば一部廃棄が義務づけられてゐる。
また、「東京都芝浦食肉衛生検査所八王子支所」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/sibaura/hachioji_br/statistics/index.htm
のデータによると、平成15年度同支所に於て、豚の檢査頭數2,7758頭中、トキソプラズマ症、嚢虫症による屠殺禁止、全部廃棄、一部廃棄は全てゼロ、つまり感染の確認された個体はゐなかつた、といふことだ。
勿論、檢査結果を100%鵜呑みにして良いかと問われると、「可能性はかなり低いが絶對に安全であるとは言へない」と答へるしかない。何故なら醫學雜誌で調べると、嚢蟲症の報告例は何例か出て來るからだ。
ただし、多くは東南アジア等の海外渡航歴がある症例であるし、その症例報告が論文になるといふことは、逆に極めて數が少ないことだ、と思つて頂いて尻構である。
E型肝炎についてはいくら抗体が陽性ではあれ、それが直接の感染力につながる譯ではないし
感染症発生動向調査週報」
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k04/k04_13/k04_13.html
では豚レヴアーの生食或ひは不十分な加熱とE型肝炎の感染については關聨性があるのではないかと言はれてはゐるが、豚肉の生食との關係については詳細な資料は無い。
また、東京都芝浦食肉衛生検査所の「食肉のQ&A」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/sibaura/qanda/qa.html#q7
では「豚の感染は一過性で成長とともにウイルスが消失すると考へられている」との囘答がある。

結論として、私はSPF豚であるなしに關はらづ、國産の豚であらば生食によりトキソプラズマ及び有鉤嚢蟲の寄生蟲症に罹患する可能性は極めて低いとの考へで、然るべき店に於ては生或ひは半生状態で食することを厭はない。
ただし、豚の生レヴアーはE型肝炎罹患の可能性を考へて遠慮する。


最近、 SPF豚だから安全」といふ誤つた情報 が巷に流れてゐるのをよく耳にするので、誤解を起こさぬ樣注意を喚起する爲に此の記亊を書くことにした。


※此の記亊は豚肉の生食の危險性について、私こと月 旧一の私見を述べたものに過ぎづ、必づしも科學的に正しいとは限りません。また、豚肉の生食を推奨するものでもありません。
此の記亊を讀んで豚肉の生食をされた方がトキソプラズマ症や有鉤嚢虫症、或ひはE型肝炎等に罹患されても當方は全く關知致しません。また、豚自身に感染症がなくとも屠殺〜流通の經路でO-157等の病原性大膓菌をはじめとする食中毒菌が繁殖し、それによる食中毒が起こる可能性もあります。それに關しての苦情につきましても一切關知致しません。

あ・・・前置きが長くなりすぎて、TKOのレポートが書けなくなつてしまひますた(^^;; レポはまた後日・・・

【後編】はこちら⇒「麺哲」@豐中 TKO(後編) 2005.08.18(木)實食 - 麺面日記



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