手打ち蕎麦 かね井@鞍馬口智恵光院角

「蕎麦遊楽」
http://www.sobayuraku.com/
では、全166軒中8軒しかなひ☆☆☆☆☆の特撰店である。
いつもは「先づは酒」とゆつくり飮んでから蕎麦にうつるのだが、夲日はラーメンを食べたあとの〆、といふことで「ざる」と「粗挽き」を一枚ずつのみちうもん。
新蕎麦バリバリの時期ではなひのでそれほどの鮮烈さこそ感ぢられなひが、私はある程度荒々しさの落ち着いたこの時期の蕎麦も結構好きである。
この店の「ざる」は細打ちなのだが、喉越しを犠牲にしていなひところが買える。店によつては「こんなにブツ切れになるんなら、なんの爲に蕎麦切りの形にするの?」といふ樣なシロモノを平氣で出す所がある中、「つながりの良さ」を保つてゐるのは嬉しひ。
その分「粗挽き」の方は香りを優先させてつながりは良くなひ。夲日のは喉越しを犠牲にした割には香りが今ひとつ立つてはいなかつたが、まあかういふ日もあるといふことか。
その位のブレはまあ仕方無ひことかも知れなひ。しかし今囘、期待外れだつたのはツユである。「かね井」のツユは上記ペーヂでも「私が関西圈で出逢つた中では最高レヴエルのツユ」と評してあるのだが、夲日のツユは生醤油の醤油臭さが殘り、蕎麦の香りをかき消してしまつてゐたのだ。
もしかして「生がえし」に路線變更か?!と危惧して店主に問うてみたのだが、特にレシピに違ひは無く、かえしを熟成させる日數の問題であろう、とのことであつた。その際「好み」といふ言葉を使つてをられたのだが、少なくとも蕎麦の香りを邪魔する醤油臭が殘るかえしは「好み」の範疇を超へてゐる。東京東側の下町風濃厚なツユを好む私ですら違和感を感ぢたのだから、さういふツユを知らなひ一般の關西人にとつては更に強く感ぢられたのではなかろうか。
此の店の機動力と一日あたりの客數を考慮すると、十分量のかえしを造り、きつちりと熟成させてから客に出すオペレイシヨンは難しひのかも知れなひ。しかし、醤油臭ひままのツユを客に出すのは言語道斷である。
ここで勘違ひして頂きたくなひのは、ツユを薄くしろと言つてゐるのでは決してなひといふことだ。現在のままの濃厚さで、きつちりと熟成させて醤油の匂ひを飛ばしつつも味わひは殘し、次囘訪問時には東京から來た人に出しても恥づかしくなひ「かね井」のツユを味わわせて頂きたひものである。
月 旧一的評價;今迄の歴史があるので一應☆☆☆☆☆。