「一信」@大阪市此花區 つけそば(煮玉子入り)950圓 2005.08.23實食

「一信」の麪はのび易い。
開店當初と比較するとはるかにのびにくくはなつてゐるものの、やはり食べてゐるうちにブツ切れになつてしまふのは、黒小麦の香りと引換へだと諦めるしかないであらう。
その「一信」がつけ麪を作つた、との噂を耳にして、試して來た。


つけそば(煮玉子入り)950圓


麪ののび易さはつけ麪の形にすれば解消出來るかも知れないが、問題はつけ麪で一番重要な麪の食感がどうなるか、である。今迄の「醤油そば」の麪から、表面ざらざら、ぼそぼそした食感なんだらうな、と想像し、正直食感に對しては期待を抱いてゐなかつた。
しかし、豫想は完全に裏切られた。私がつけ麪に求むる「わしわし」とした食感でこそなかつたが、水で〆られたその表面は細かな凹凸こそ感ぢるものの、喉越しは至極なめらかで、ボソボソ感は皆無であつたのだ!!
麪の香りに關しては、「醤油そば」をひと口啜つた時の樣な、むわあつ、と香り立つ樣な感覺こそ無いものの、逆に鹹水臭が全く氣にならづ、却つて黒小麦の良さを引き出せてゐる樣に感ぢられた。
よく考へてみると、蕎麦屋に於ては冷たい蕎麦が喉越し良くとも、熱い汁の「種物」になると途端にすぐのびてブツ切れになつてしまふ店が多い。特に手打ちのマニヤツクな店ではその傾向が顕著である。「一信」もラーメンといふよりは蕎麦に近い、とよく評されてゐるのだから、拙 「蕎麦遊楽」 に於て散々蕎麦について語つておきながら、そこのところにもつと早く思ひ至らなかつたのは全く汗顏の至りである。

一方、つけ汁の方はといふと、全體の味が 梅紫蘇に支配 されてしまつてゐたのが非常に殘念だ。折角のいいバランスのダシに梅紫蘇が入つてゐるのは例へれば、「森伊蔵・極上の一滴」等の幻の燒酎に梅干しを入れて飮んでゐる樣で、勿体無きことこの上ない。
まあ品書きにも書かれてゐる通り、此の「つけそば」のコンセプトは「梅しそ風味の温かいだしで 冷たいそばをお召し上がり下さい」といふことらしいので、店主の言はるる通り、梅しそに支配された味がイヤなれば食べなければそれでいいのだらうが、麪の喉越しがいいだけにこれを普通のダシで食べることが出來たら・・・と思ふとやはり惜しくてならない。

確かに「一信」のダシに普通のつけ麪の如く酢を入れてしまつたら、それこそ梅しその比ではなく味をブチ壞してしまひさうであるし、何にも入れなかつたらそれはそれで「麪とスープをただ別々に出しただけ」と思はれてしまふ危險性も祕めてゐる。現在の形に落ち着いたのはそこいら邊の試行錯誤の結果なのであらうが、百歩譲つて梅紫蘇は別皿で供して頂けないものであらうか・・・
具は最初から別皿で供さるる。
私は常々つけ麪の具に餘計な飾り立ては不要であると、それこそ口が梅紫蘇に支配されてしまつたかの如く言ひ續けてゐる(id:menmenmen:20050217#p1)のだが、この店に限つてはつけ汁の中に具をブチ込むのではないこの形がベストであらうと考へる。何故なら、大量の麪をわしわしと勢いで頬張り、 麪を呑む快感 を樂しむ一般的なつけ麪とは違つて、「一信」ならではの黒小麦の香りと味はひを樂しもうとすると、つけ汁の中の具が邪魔になつてしまふからである。
麪を先に味はひ、そして殘つた具でラガークラツシツクを一夲空ける、といつたスタイルが正解なのかも知れない。


今囘の「つけそば」で確信を得た。麪を冷たい状態で供するこの方式こそ、「一信」の黒小麦麪のうまさを最大に引き出すことが出來るのである、と。
殘念ながら夏季限定(8/31まで)のメニウではあるが、是非ともレギユラーメニウとして定着させて頂きたいものだ。勿論、梅しそ拔きで、である。
しかしいくら「つけそば」の方が麪を美味く喰へるからといつても、それをメインにしてきつちりと利益をあげつつ營業するには、關西では客の方にそれを受け入れる土壤がまだ出來てゐないのであらうが・・・


月 旧一的評價;★★★★ +α・・・
・・・と言ひたいところなのだが、梅紫蘇がバランスを壞してゐるので


月 旧一的評價;★★★


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