「中村屋」@高座渋谷 特中村屋(醤油)950圓 2007.12.03 實食

兎に角げうれつのお店、といふイメイヂがあつたので、それを囘避する爲に以前より行くタイミングをはかつてゐた。
今囘、やうやく平日の昼間にシヤツターする機會に惠まれたので、滿を持しての訪悶。
12月の冷たい雨が降る中、開店數分前に到着すると、思惑通り私の前に待ちは たつたの2人だけ 。しかし、それでもメニウを持つて開店前にちう悶を取りに來る・・・別にこの人數なら店に入つてからでもゑゑんとちやうのん?
程なく暖簾が出されて店内に。案内されるがままに、カウンタの一番奥に座る。關西なら「ラヲタ席」とか言はれさうなポジシヨンだ。

さて、何を食するか、である。「初めての店では基夲メニウを食するべし」といふのがラーヲタの鉄則なのだが、かような辺鄙な場所にある店にさうさう來る機會なんぞなかなか無い。やはり「これぞ中村屋!」といふ一品を、といふことで「特中村屋」をちう悶。どこかで店主が「初めての人には塩をおすすめします」と言つてゐた樣な記憶があるが、メニウのトツプに書かれてゐるのは醤油の方であるので、醤油にしておいた。


中村屋(醤油) 950圓


この「特中村屋」、2005年の夏までは「烈士洵名」で現在使われてゐる、浪人笠を逆さにした樣な、人間工學を完全に無視したふざけた形状の丼で供されてゐた樣であるが、さすがに食べにくいと評判が惡かつたのであらう。現在は普通の小振りな丼を使用してゐる。
先づはスープをひと口。
薄味かな、と思ひきや、良質なダシの旨味がふわりと口の中に廣がり、じんわりと尾を引いてゆく。濃すぎづ、薄すぎづ。旨味も出すぎづ、足りなすぎづ。實に良いバランスのスープである。web上では「ニンニクが利いてゐる」といふレポートをよく見かけるが(2000年頃の記亊に多い)、特にその樣なことは感ぢられなかつた。
この日、店主の中村氏は不在。ボケツとしてゐて「天空落とし」をやつてたかどうかは見逃してしまつたが、しやつきりとした食感の細麪ははこれまた硬すぎづ、ヤワすぎづ。スープともよく合つてゐる。
目の前で炙られるチヤーシウは香ばしく、またこのテの店でよくある樣に焦げ臭かつたり妙に脂つぽかつたりすることもない。
具は他に半熟の煮卵、シナチク、ほうれん草、海苔。みじん切りにされたネギがぱらりと散らばつてゐる。海苔が少々多過ぎる樣な氣はするが(笑)感心したのはネギの切り方だ。ネギを小口切りにした場合、ともすればその香りの強さがスープの微妙な味はひをスポイルしてしまふことが往々にして見られるのだが、みじん切りだとその心配は無い。
ただ單にスープ、麪、具の出來がいい、といふのみではない。それらが高次元でバランスされてをり、そしてネギの切り方に見られる樣な細やかな心配り。さすがにこんな場所で行列店になるだけのことはある、といたく感心させられた。

しかし!!
「感心」はしたが、「感動」したか、といふと話はまた別だ。
確かに美味ひのではあるが、「またここまで來て食べたいか?」と問はるると、不思議とさういふ感情が湧いて來ないのだ。
・・・いや、その前に、この味は以前、どこかで食べたことがあるぞ?


「くじら軒」@センター北 らーめん+味付玉子


・・・これか!!

「くじら軒」との相似性についての報告はweb上でしばしば見られる*1 *2 *3 *4が、かうして並べてみると、夲當によく似てゐる。
ただ單に和風スープや細麪が似てゐる、といふだけではない。使つてゐる具材もほぼ同ぢであるし、その上チヤーシウの部位やメンマの細い切り方までもが同ぢであるといふのは、これはまう偶然の域を超へてゐるだらう。
「ウィキペディア」によると店主が北米留学中にインスタントラーメンを基本に「独学で開発した」 とのことであるが、まさかいくらなんでも同ぢ神奈川で此のウルトラ有名店のことを知らなかつた、などといふことはあるまい。素直に「くじら軒」インスパイヤーです、とでも言つとけば潔かつたものを・・・
斷わつておくが、私はパクリが惡だ、などと言ふつもりは毛頭無い。しかし、やはりどれだけ完成度が高からうが、あまりにもどこかの店に似過ぎたものを持つて來らるると、多少なりとも興醒めしてしまふことは否めないのだ。

中村屋」が他店との差別化をはかる爲にすべきことは、湯切りのパフオーマンスなどではなからう。


月 旧一的評價;★★★★


追記
もしも私が「くじら軒」 より先に「中村屋」を食してゐたら、迷はづ ★★★★★ をつけてゐたことだらう。また、實際に二杯を並べて較べてみると、化調入りの「くじら軒」の方に不自然さを感ぢてしまうかも知れない。
味のレヴヱルが一定以上の水準にある時、重要なのは唯一無二のオリジナリテイがあるかどうか、なのだ。