【書評】見川鯛山氏、死去(88歳・心筋梗塞)にあたつて by月 旧一

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050809-00000019-mai-peo

私の醫療マンガコレクシヨンの中に鯛山氏原作の「本日も休診」のコミツクもあり、此がまた何ともいい出來なのだ。
http://www.s-book.com/plsql/com2_detail?isbn=4091845215
http://www.s-book.com/plsql/com2_detail?isbn=4091845223
先づ毎囘の冒頭に、季節感溢るる那須高原の自然を描写したシーンがあるのだが、それが(おそらく油繪の心得があるであらう)作画の石川サブロウ氏の緻密で逹者な繪で忠實に再現され、あたかもそこに自分が行つたことがある樣な錯覺に陷るほどだ。
そして特記すべきはその内容である。醫者が主人公の漫画といふと、どんな作品であつてもひとつやふたつ「病氣が主役」の話があり、それを治す醫師の姿、或ひは病氣と闘ふ患者さんの姿がストーリイの中心となつたりするものだ。しかし此の作品にはその樣なヱピソードが一切無ひのが潔ひ。
勿論、醫師であるが故に登場人物の病氣や生死の場に居合わせる、といふシーンはある。だがそれはあくまで物語の一部に過ぎづ、ストーリイの根幹は那須の自然であり、またそこで生まれ、育ち、そして死んでゆく人逹なのだ。

さういへば鯛山氏自身の著書をきつちりと讀んだことは未だ無かつたなあ。此の機會に何冊か揃へてみるかな。