竹邑庵太郎敦盛@烏丸丸太町近傍

menmenmen2004-09-28

2004.09.18實食。
冩眞は「敦盛そば」一斤820圓
その存在こそ以前より知つてはいたものの、なかなか試してみる氣にならづに先延ばししてゐたが、やうやくその機會が訪れた。最初は店名を冠した・・・といふか、その蕎麦から店名を取つた「敦盛(熱盛り)そば」を頂くことにする。
仰々しい木箱に入れられて御登場の「敦盛そば」は、蓋を取ると湯氣がもわつと立ちのぼる。箱の中に敷かれた簀子の下に湯が張られてをり、それにより蒸される形になつてゐるのだ。食感はふわりと柔らかひ、と言ふと聞こへはいいのだが、噛むとぐんにやりと柔らかく、齒應へも頼りなくぶつぶつと切れる。それ故喉越しの良さは望むべくもなひが、熱盛りにすることによつて蕎麦の香りはなかなか立つてゐる。
私が蕎麦を肴に酒を飮むことが嫌ひなのは、蕎麦がのびるのを厭つてゆつくりと酒が樂しめなひからだ。しかし、此の「敦盛そば」は最初からのびてしまつてゐる樣なものだから、その心配が無ひのは氣分的に助かる。
また、私は蕎麦を喰ふ時は江戸流で噛まずに呑み込むことが多ひのだが、いくら消化に良ひと謂はるる蕎麦とはいへ、さういふ喰ひ方をすると胃にもたれてしまふことが多ひ。しかし、「敦盛そば」ではその「もたれ」が全く無かつたのはさすが「そばハくすり」である。まあ喉越しが惡ひので噛まざるを得なひといふことも影響してはゐるのであらうが。

ツユを入れる椀にはあらかじめ卵と九条ネギが入れられて來るので單品での味につひて述べても仕方なひかも知れなひが、醤油の香りが殘るやや甘口なツユはかえしがしつかりと作られてをり、それのみの味としては私の好みからやや外れるものの蕎麦のキヤラとのマツチングが良く、このテの店としては想像以上にレヴエルが高ひ。
しかし、問題点は卵の存在である。ツユにこの卵を溶くことにより、先程指摘した喉越しの惡さは改善さるるのだが、肝心の蕎麦の香りがマスキングされてしまふのは痛し痒しといつたところだ。
注文時に卵とネギを入れてもいいか訊ねてくれるので、卵を拔ひて貰ふといふ選擇枝も無ひではなひが、あのもつさりとした食感が最後まで續くとなるとそれも少々躊躇はるる。ここは椀をまうひとつ貰つてひとつはツユのみ(或ひはそれにネギを入れる)とし、まうひとつの方は卵を溶ひて双方を比較しつつ食すのが妥當な線かも知れなひ。

冷たひ蕎麦は一転して出石風皿蕎麦となる。こちらは水で締められた分ゴワつきが強く、喉越しも今ひとつである。(そもそも出石の皿蕎麦に喉越しの良さなんぞ最初から存在しなひのであるからそれを求むる方が無理だとも言へるのだが)
まあ熱盛り一品だけではちよつとなあ・・・と感ぢらるる方が目先を變へるのに食されればそれでよかろう。

純粹な蕎麦を探求さるる方には到底オススメ出來なひが、タマ〜に食べる変化球としてはなかなか出來が良ひ。北山に住む私が「なからぎ」「じん六」「かね井」「小川」「にこら」をパスしてまで「太郎敦盛」を訪れる機會はさうさうあることもなからうが、實は私はかういふ味の方向性もケツかう好きだつたりする。

月 旧一的評價;☆。(心情的には☆☆に近ひかも)