福三@北山通り西のどんつき間近北

夲日より發賣の濃厚鷄そば(塩)650圓をちうもん。
但馬産地鷄の胴ガラだけを一鉢に一羽分程(!!)使つてダシを取つたといふ力作。その贅沢なダシの取り方故、一日20杯限定のメニウである。
てろりと乳化したスープは濃厚かつクリーミイ。美味かつた頃の「東龍」はこんな感ぢだつたよな・・・とありし日が思ひ起こされたが、味の構成はだいぶ違ふ。鷄のみならづ野菜等の旨味が複雜に絡まりあつていた「東龍」と比較して、こちらは鷄の旨味のみを味わう爲に、敢へてシンプルに仕上げてある。
最近、何を勘違ひしてゐるのか塩ラーメンを出す店で、ダシの味がしなひくせに塩だけが前面に出てゐるところがあまりにも多くて辟易していたのだが、さすがに「福三」の「塩」ではそんなこともなく、マイルドな塩味をダシが包み込んで期待に違はぬ出來映へだ。
麪は他のラーメンと同ぢく細麪で、此がベストのマツチングかと問わるると他にも選擇枝がありさうな氣もする。しかし決して相性が惡ひといふ譯ではなひし、20食限定のラーメンに麪まで特注といふ譯にもいかなひから、まあ現状で十分であらう。
具はチヤーシウ、メンマと九条ネギの他に白髪ネギ、焦がしネギ、そして鷄ミンチまでが載つてゐる。どちらかといふと焦がしネギは乳化させなひスキーリしたスープに合はせるものだと思つていたが意外や意外、絶妙のマツチングを見せてゐる。
・・・と、ここまで讀まれたら、「月 旧一らしからぬ褒めちぎり樣だ」とか「☆☆☆☆☆の評價がつくのか?」とか思はるる方もをらるるかも知れなひ。亊實、私もひと口目は「☆☆☆☆☆つくかな?」と思つた程だ。
しかし!!!食べ進むにつれ、此の「濃厚鷄そば(塩)」が持つ大きな問題点があらわになつて來た。それは、
「食べてゐる途中で飽きてきた」
ことだ。
鷄の旨味を前面に出した味は實に潔く、ひと口目はその直球勝負に感動する。しかし、あまりにもシンプルでストレートなるが故に、飽きが來るのも早ひのだ。無論、今迄に私が「途中で飽きる」と評してきた凡百の店と較べると、遙かに考へられてゐることも確かだ。先程の焦がしネギ、途中のアクセントとなる鷄ミンチ、そしてラーメンに添へて供さるる黒胡椒を使つたニラキムチ等、味が單調にならなひ樣な工夫のあとは店主自身が此の「濃厚鷄そば(塩)」問題点を十分に承知した上のことではなひかと推察さるる。
では、どうすれば良ひのだらうか?
個人的にはまう少しグルタミン酸成分を増やすか、或ひはグルタミン酸をより感ぢやすくする爲にイノシン酸成分を強化し、タレに若干の甘味があればいいのにな、とは思ふ。しかし、ダシには鷄のみではなく昆布も使用してゐるし、塩ダレには干し貝柱も使つてゐるさうなので、下手をすると「ピカーリ食堂」や「風花」の樣に旨味過多でキモチワルヒ後味になつてしまふ危險性も祕めてゐるし、第一、最大の特徴である「鷄の旨味を味わふ」コンセプトに反してしまふではなひか。
尻極、「濃厚鷄そば(塩)」が「濃厚鷄そば(塩)」である爲には「途中で飽きる」亊は避けて通ることが出來なひと思はるる。後出來るとすれば「神助」の如く、割り切つて塩ダレ成分を減らし、食べ終わつた時点で滿足出來る樣な味の構成にしてしまふこと位か。「福三白ラーメン」もさうであつたが、此処の「塩」は微妙に私のツボを外れてゐる樣である。
2、3口しか食していなひが「濃厚鷄そば(醤油)」の方が旨味と甘味のまとまりが良かつたので、次囘はそちらを試してみる亊とする。

月 旧一的評價;☆☆☆+0.5。