「阪神優勝の經濟効果●●億圓」のウソ　by月　旧一

とても殘念なことに、あのクソ阪神タイガースごときが大まぐれで優勝してしまつた。常識といふものを持たぬ愚劣なフアンどもが無理矢理球場に侵入して逮捕されたり、封鎖された戎橋とは違ふ橋から飛び込んだりして見苦しいことこの上ない。一番の問題は、かういふことが報道されることによつて關西人＝阪神フアン＝非常識、とか思はれてしまうことで非常に苦々しい。
關西の恥、それは阪神フアンどもだ。
・・・とまあ此の秋晴れの空の下、非常に不快な氣分でゐるのだが、今囘の夲題は「經濟効果」である。
此の「阪神優勝における經濟効果は●●億円！」といふ計算、何を根拠に數字を計算してゐるのか、を調べてみた。
今囘、發表されたのはUFJ総研が出した「全国で1455億円、関西限定で709億円*1」　といふ數字だが、同總研のH.P.*2にその計算の詳細があつたので檢証してみやう。「全國」と「關西」に分けて書かれてゐたが、數字の大きい「全國」で調べてみる。

1. 「観客動員数の増加に伴う支出」
日夲シリイヅを含み今季328萬人の動員を想定、過去3年の平均動員數からの増分を113萬人と試算。
　チケツト收入（２４００圓/人）　　　　　：27.2億圓
　球場内の消費（５００圓/人×６０％）　　：2.8億圓
　交通費（鉄道）（１０００圓/人×６０％）：6.8億圓

・・・一寸待て。「優勝による」經濟効果の話ではなかつたか？一年間の觀客動員を計算に入れるのなれば、ぎりぎりまで優勝を爭つて二位になつても經濟効果は同ぢ、といふことになつてしまふではないか！！ちやんと計算するんなら優勝の瞬間から日夲シリヰヅ終了までの増加分を調べるべきではないのか？！

2. 「優勝記念セールに伴う消費支出」
優勝セールは阪神百貨店が03年並、その他は準備期間の短さから前囘の5〜7割程度と想定。
　阪神百貨店　　　　　：60.0億圓
　その他百貨店・商店街：26.0億圓

期間を考慮してゐるからには、まさかこつちも一年間の賣上げの増加分、なんてゑことはない樣だ。
しかし、優勝セール期間の賣上げの全額なのか、それとも通常のその期間の賣上げからの増加分なのか、が表示されてゐない。もし前者だとしたら UFJ總研、怠慢だぞ。
また、阪神百貨店自體の2004年度の經常利益が22.7億圓にしか過ぎない*3のであくまで「賣上げ」の數字にしか過ぎないのであるが。

3. 「阪神タイガースの勝利に伴う飲食等の関連支出」
全國の阪神フアン1100萬人を想定。飮食を中心に年間750圓/人を追加支出。
　82.5億圓

・・・これも「年間」支出なのね(^^;;

4. 「マスコミ（スポーツ新聞）への支出」
スポーツ新聞の發行部數555萬部/日。關西の阪神フアン（17％）の1割が1勝につき新規に購入。
　555萬部×17％×10％×單價130圓×85勝×531/1100
　5.0億圓

・・・これまた年間賣上げの數字。
「關西の阪神フアンの1割が1勝につき新規に購入」・・・どういふ根拠で？！
最後まで優勝を爭つて敗れた92年と優勝の年を比較するとか、それに物價の動向を反映させるとか、さういふ緻密な計算をしてるんかと思つてたのに、こんなどんぶり勘定だつたとは。。。
スポーツ新聞の發行部數とかは調べたらわかるだらうに、わざわざこんなヘンな計算式を導乳する必然性つてあるんか？

5. 「阪神タイガース関連商品への支出」
今季の新規購入（單價3939圓）を想定。
　433.3億圓

單價の3939圓の根拠は？まさか語呂合はせ（サンキユーサンキユー）ぢやあないよな？！
それよりも氣になつたのが「新規購入」といふ言葉。グツズを買ふ時は大概新規購入になると思ふのだが、如何なものだらうか？それとも此の數字は、メガホンをひと組持つてる人が新しくメガホンを買い足したりした分は「新規購入にあらづ」と差し引きした數字なのであらうか？
あと、再三言ふが「優勝における經濟効果」であるからには「優勝出來なかつたら期待出來ない數字」をあらわすべきだ。しかし、此の數字はどう見ても年間の賣上げの豫想にしか思えない。少なくとも一昨年の優勝時、昨年の優勝出來なかつた時も併せて比較して、増加期待分だけを計算すべきではなかろうか？

しかも、タイガース關聨商品への支出が433.3億圓といふことは、ここまで列記した直接需要の合計は648.2億圓なのでその實に 3分の2を占める計算になつてゐるのだ！！
もしかしたら「關聨商品」は全國レヴヱル、コンビニで阪神のマークをつけただけの缶飮料を買つてもそれに含めてゐるのかも知れない。確かにその場合は額が巨大になることは否めないが、先程調べた阪神百貨店の2004年度の決算データによると、同百貨店の年間賣上げは1161.4億圓である。その1/3を越える數字が「關聨商品への支出」とひとくくりになつてゐるのは異常なことではないだらうか？

加へて不可解なのはその後の計算だ。此の直接需要648.2億圓が、「産業連関表」といふものを用ひて定量的に分析すると、倍以上の1455億圓にまで膨れ上がり「生産波及効果」と言ふ名前になつてしまふさうだ。
私は經濟に關しては素人なのでどういふ計算式があるのかはわからないが、「直接需要」以外には具體的にどういふ波及効果があるのであらうか？實際、それによつて動く金が「直接需要」を超へるほどもあるものなのだらうか？

第一、その「直接需要」にしても觀客動員に關しては昨年からの増加分で計算してゐるのに、優勝記念セールに關しては（多分）その期間の百貨店賣上げ總額を、飮食關聨とスポーツ新聞は根拠のわからない計算で算出、とベースがばらばらである。そして一番の問題点は一番額の大きい「關聨商品への支出」の計算があまりにも大雜把であることだ。
せめて觀客動員と同ぢく優勝セールによる百貨店賣上げやスポーツ新聞の賣上げは前年度よりの増加分のみを計算すべきではなかつたであらうか？

他におかしなところを言へば此の計算、は經濟的損失についてはひと言も触れられてゐない。
G.W.等の大澀滯に關しては經濟的損失が語られてゐるのだから、優勝時の人出による澀滯が引き起こす損失分も減算せねばならないだらう。また「何をやつてもいい」と勘違ひして暴徒と化したサル以下のフアンどもが破壞の限りを尽くした街の損失もあるし、「かに道楽本店」などはさういふ亊態を囘避して早仕舞*4までせねばならない亊態に陥つてしまつたさうだ。
同樣に、暴れられたら困るので店を閉めたか、又は開けなかつた所は他にもあるだらう。その分の經濟的損失についても計算すべきである。

阪神が優勝しさうになる度に經濟効果が言われるのは、丁度昭和39年（1964年）優勝の翌年から戰後最長の「いざなぎ景氣」が始まり、昭和60年（1985年）優勝の翌年からは「バブル景氣」が始まつてゐるのでそれを受けての「夢よまう一度」の期待感込み、であらうことは否めないであらう。
今囘も株價は上昇中なので景氣は上がつて來るのかも知れないが、それはたまたま、であつて、阪神タイガースとは全く無關係である。
實際、今囘の優勝で、阪神グループ關係者以外でその利益を受けた方は一體どれだけをらるるのであらうか？

かういふ下らん數字を計算するのは、そして報道して一憙一憂するのはもうやめにして頂きたいものである。

※尚、此のUFJ總研の調査レポート、何と記名記亊なのである。PDF版にはメールアドレスも記載されてゐるのでレポートの内容に疑問を感ぢられた方がをられたら、UFJ總研調査部（大阪）の鶴岡武氏に質問メールを送つてみるのもいいかも知れない。

【參考ペーヂ】
幸之介の＠：阪神優勝と「経済効果」*5
ぁゃιぃ探索隊：縞模様の経済効果*6
TBS News-i*7
わいわい関西マネー情報*8
アジルアソシエイツ：colum 第２１回「経済効果？」*9
UFJ総合研究所*10
阪神百貨店 *11

【追記】
■Yahoo!ニュース：“Ｖダイブ”に府警が厳戒態勢*12
さて、“Ｖダイブ”防止に戎橋に取り付けられた此の柵。此つてもしかして、大阪市民の税金で作られてゐるのではないでせうか？
馬鹿者逹を止める爲に阪神フアン以外の人の血税も流用されてしまう譯ですよねえ？腹立ちませんか？＞阪神フアンでない大阪市民の方々

私は別にこんな柵なんか作る必要はないと思つてまし。
柵のかわりに丁度飛び込むあたりに先端の尖った槍ぶすまを何個か設置しておいて、「飛び込んでもいいけど、死ぬよ」と言つてあげれば良いのでし。
それでなおかつ飛び込んで死ぬ樣なバカは生きてゐてもロクなことにならなひでせう。