久留米ラーメンフヱスタ

menmenmen2004-11-18

11月06日(土)、久留米で行われた「久留米ラーメンフェスタ」の「ドリームバトル」といふ、4人のラーメン店々主が店で提供してゐるのと違ふタイプのオリヂナルラーメンを作り、どれが一番美味ひかを決める選手權に審査員のひとりとして參加させて頂ひた。
各人麪、スープ、總合に1〜3点の点數をつけ、總合点數の多ひ店を勝ちとするイヴエントである。
出されたラーメンを順に檢証して行かう。

1. 「博多一風堂」河原成美氏の「博多・塩“KOTOBUKI”」

【フレコミ】(會場で配られたパンフによる。以下同。)
テーマ;めでたい“博多雑煮”をイメージ。
スープ;鷄がら・丸鷄と豚骨をベースに魚介系のダシを加え、深い旨みがありながら透き通ったスープ。
麪;細めのストレートメンを自家製で打ちあげた。香りと旨みが際立つ国産小麦をブレンドした麺は、しなやかでかつコシがあり、スープとの相性も抜群。
トツピング;薄切りにしてこんがりと焼き上げた焼餅が特徴。スープを吸った焦げの部分がふんわりとふやけ、焦げの香ばしさと相まって懐かしさを演出。チヤーシユーは、三枚肉を塩水に漬け込んだあっさり味。仕上げに白髪ネギと、博多雑煮には欠かせないかつお菜をみじん切りにして散らし、彩りを添えた。
【感想】
最近流行りのダシの味がしなひで塩しか喰はせていなひシロモノと違つてダシを喰わせる、という塩ラーメンの文法に乘つ取つてゐるのは買へるが、「雜煮」なればまだしもラーメンとしてはダシが弱ひ。また、同ぢく「雜煮」といふモチーフから鹹水の量を抑へたのかも知れなひが、つるつるしてるだけでコシが無ひ麪はラーメンの麪としては失格だ。ダシの弱さと麪の弱さで釣り合ひこそ取れてゐるが、此ではラーメンではなくただの「にゆうめん」になつてしまつてゐる。
月 旧一的評價;麪1点、スープ2点、總合1点 計4点。


2. 「大砲ラーメン」香月均氏の「南方系しょうゆラーメン」

【フレコミ】
テーマ;アジアの玄関口・九州
スープ;「久留米さざなみどり」をベースにしたスープに、玄海灘の焼きアゴやウルメイワシなどでとった和風スープを加えた。元ダレの醤油は天然醸造の地元醤油と東南アジアの魚醤、さらに本人手作りのイカ魚醤をブレンドしたもの。そして風味豊かな手製のエビ油を浮かべた「無化調」スープ。
麺;筑後平野で採れた小麦粉「チクゴイズミ」を使用した特別仕様の自家製麺。高めの加水にはスープの乗りを考え、程良くウエーブさせた。滑らかな舌触りとコシのある食感が特徴。
トツピング;エビ・豚ミンチ・フクロ菌・ニラを強火で炒め、オリジナルブレンドはスパイスと三種の魚醤で味付けしたものを、シンプルに盛り付けた。
【感想】
元ダレには醤油、ナムプラー、イカ魚醤を使つてゐたさうだがナムプラーの香りがかなり強く、オレンヂ色のスープといいトツピングのエビやフクロ茸、そしてニラを見た限りではタイの激辛スープトム・ヤム風だ。
「何だ、トム・ヤムに麪を入れただけかい!藝が無ひなあ!!」とスープを啜ると確かにひと口目はそのクセの強さでアジア風のイムパクトがあるが、下から出て來たのはまごうことなきラーメンの味。そのギヤツプに思はづ「ヤラレタ!」と脱帽。これだけヱスニツクに振つてゐながら全体としてのバランスも良く、麪がきつちりと合つてゐるのも評價の對象である。
月 旧一的評價;麪2点、スープ2点、總合2点 計6点。


3. 「支那そばや」佐野実氏の「九州有田とんこつらぁ麺」

【フレコミ】
テーマ;臭くなひとんこつラーメン
スープ;豚のげんこつ、背骨等を使用。特有の臭ひはなく、独自に開発したフルーツオイルを使ふ事で、甘ひ香りが鼻腔をくすぐるやさしく上品な味わいのあるスープ⋯まさしく、「佐野実、臭くなひとんこつラーメン」。
麪;めつたになひ鉄の臼で挽いた国産小麦を使用。噛みしめると小麦の旨みが口いっぱいに広がって、完成度は高ひ麪。
トツピング;小ねぎ(佐世保産)、昔たけのこ(八女産)、チヤーシウ、のり、トウコウ(醤油のもろみ)の揚げ玉
【感想】
さあ、とんこつを喰ふぞ!!と意氣込んでゐるとあつさり系で肩透かしを喰ふ。しかし、魚系のダシと相まつてスープの味のバランスは4人中ピカイチ。滿腹になつてしまふと正常な味の判斷力が失はれてしまふので他の店のスープは全て殘させて頂ひたが、あまりの美味さに飮み干してしまつた。期待の麪はひと口目こそその香りに「おおつ!!」と唸らされたが、食べ進んで行くうちに馴れのせいか香りをあまり感ぢなくなつて感動が薄れて來た。
月 旧一的評價;麪2点、スープ3点、總合3点 計8点。


4. 「でびつと」デビツト伊東氏の「紅珀」

テーマ;アタタカミのある白味噌ベースの豚骨スープに、男をイメージした赤味噌⋯食するごとに変化する、味のコントラストをお楽しみ下さい。久留米ラーメンエスタだからこそ出來る⋯味噌ラーメンです!
スープ;げん骨、背がら、野菜を15時間以上じっくり煮込んだスープです。
トツピング;思案中⋯
【感想】
醤油ラーメンや塩ラーメンと違つて味噌ラーメンの美味ひ店が少なひのは結局、味噌のみで全ての味が決定してしまふ故、ダシが生きてこなひからだと常々考へてゐる。また、ダシが生きて來なひので店の方もダシをおざなりにしてしまつてゐる觀がある。此の「でびつと」も然り、15時間以上じつくり煮込んだといふスープがまるで感ぢられづ、味噌に味を全て支配されてゐるのみでその上生姜が強すぎたのも減点對象となる。濃ひ味噌汁に麪が泳いでゐるだけ、といふ感覺。
月 旧一的評價;麪2点、スープ1点、總合1点 計4点

・・・と、いふ譯で、「支那そばや」佐野実氏の壓倒的勝利に思はれたのだが(亊實、他の審査員のラーヲタの出口調査でも「支那そばや」優勢であつた)、何と優勝は「博多一風堂」河原成美氏であつた。凸(-_-#
しかもその際何と「スープが失敗してたので、捨ててしまひ棄権したかった」とコメントされたさうだ。
確かにラーメンのダシとしては弱ひとは評したが、モテイーフの「雜煮」だつたらあんなもんだらうし、麪をにゆうめんの如くしてしまつたのはわざわざあのスープに合わせたものだと思つゐたのだが。。。
一般の審査員はあまり塩ラーメンを食べた亊が無かつたので評價の比較對象が無かつたのも幸ひしたのかも知れなひし、そこにアゴダシの「雜煮」で郷愁をそそらせ、加へて敢へて「ラーメン」の枠をはみ出た味に設定したことも結果的に他との差別化を図ることが出來たのかも知れなひ。
決してスレたラーヲタを滿足させ得る味ではなひものの、けなすべき点もあまりなく、それでいて一般客を十分滿足させる味の落としどころを心得てゐる、「あざとひラーメン」を作らせたら日夲一の氏のことなれば、今囘の味も全て計算ずくの亊であつたのかも知れなひ。
あと個人的に勝因のひとつとして地元審査員の郷土意識が働ひて「關東モンに勝たせてたまるか」となつたこともあるのではなひかと思つておきたひ。