彩色ラーメンきんせい@高槻

(實食2004.08.17)

麪を變へてみた、との噂を聞いてからなかなか行く機會が無かつたが、夲日、急に夕食を外で食べて歸つて來る樣に言われたので、ここぞとばかりに颱風の大雨の中を突撃。夲來なれば前囘と同条件の「薫製鷄塩」を食すのが道理だらうが、麪そのものの出來をチヱツクしたかつたのと、關西圈におけるつけ麪に對するスタンスにつひて最近思ふところがあつたので「醤油つけ麪」を試す。
で、その麪である。食べたその時には前囘よりも透明感が少なひ氣がしたが、原稿を書く段階で冩眞を比較してみるとヴイジユアル上の大きな相違は見られなひ。
先づは麪のみの味を見る爲に、つけ汁に入れづに頂く。かういふ食べ方をする場合、麪の上に具が載せられた状態だと非常に食べにくひ。特に、麪の食感を損なひ、しかも不要な味を与へるだけの刻み海苔がべつたりと貼り付ひて來るのはとても不快である。水菜と海苔を除けつつ麪のみを口にすると、前囘とは違つて麪のカドは氣にならなひものの冷水で締められた麪はやはり硬ひ。まあ此は元來、つけ汁につけてから食すべきものを勝手にそのまま食べた結果のことであるから惡ひのはこちらの方なのだが、麪をわしわしと口に頬張つてからぐいつとつけ汁を飮む、といふつけ麪ならではのお下フインな食べ方が出來なひのは少々寂しひ。もつとも、その食べ方をするにはつけ汁もそれに合はせたお下品な味でなければならなひのだけれども。
話が横道にそれてしまつたが、次はつけ汁にさつとくぐらせて頂く。驚ひたことに、ただそれだけのことで麪の食感が劇的に變化する。私がつけ麪の麪に求める「むつちり」「モチモチ」した食感でこそなひものの、前囘のブヅリと切れるところてんの樣な食感からは飛躍的に向上し、噛まなひと飮み込めなひ硬さながら「シコシコ」した彈力性のある食感を傳へてくれる。東京のつけ麪を未經驗の人逹には、むしろこちらの食感の方が好まれるのかも知れなひ。
最後にしばらくつけ汁につけ置いたものを試してみたが、これはまるでダメ。のび切つてしまつてゐて、齒を入れると彈力性無くブヅリと弱々しく切れる、ところ天食感に逆戻り。結局、「麺哲」の庄司氏が「秀次郎」初期に出していた麪同樣、のび易ひタイプなのであろう。冷水で締めていてすらかうなのだから、茹で上げて其の儘熱ひスープに入れた麪がすぐ食感を損なつてしまふのも道理である。この「のびやすさ」は要改善ポイントだ。
さて、先程ちらつと触れたつけ汁であるが、濁り無くすつきりとしたそれは、タレの濃ささへ無ければ燒肉屋で出て來るワカメスープ等を連想させる。ダシはしつかりとしてゐるし、味もきつちりと濃ひのであるが、個人的にはかういふお上フインに澄んだダシでつけ麪を食べたひとはツユとも思はなひので評價のしようがなひ。
「つけ麪」とは麪をスープとは別に出してそれをつけながら食べる、といふひとつの形態に過ぎなひので麪がどうであろうとつけ汁がどうであろうと、果ては具が麪に載せられていようとつけ汁の中に入つていようと構わなひ譯ではあるが、そのルーツを辿つた時、行き着くのはやはり東池袋大勝軒」である。その夲家通りのモノを出さなひといけなひ、とまでは言わなひが、「つけ麪」をメニウに載せる上ではやはり夲家を知つた上での何らかのリスペクトを感ぢたひと思ふのは私の勝手な感傷に過ぎなひのだらうか。
最近、關西でつけ麪を出す店が増えたのだが、ただ麪とスープを別に出してみただけ、の店の何と多ひことか。夲來、つけ麪といふ食べ物はラーメンと全く別の食べ物であるからつけ汁はもとより麪もそれに合はせたものを用意せねばならなひと思ふのだが、そこまで氣を囘してゐる店はごくごく少數である。もつとも、夲家である「大勝軒」もラーメンともりそば(つけ麪)の麪は一緒なのでこちらは逆に、ラーメンにした際の麪の食感が若干劣つたりしてゐるのだが。
では、どこのつけ麪がベストなのかと問われると、返答に困る。西宮「大勝軒」が一番理想に近ひのではあるが最近どうもダシが弱ひので、西宮「大勝軒」の麪を「東池袋大阪大勝軒」か或ひは「カドヤ食堂」のつけ汁につけて食べてみたひと思ふ今日この頃である。

月 旧一的評價;評價のしようがなひ

P.S.
雷雨の中、某變態ラーヲタ生殖屋・・・もとい染色屋さんが相棒の某木霊な方と連れ立つて來たのでスペシヤル試食メニウを少し頂ひたのだが・・・
ま、新しひモノに挑戰する際は、先づ基夲がどうなつてゐるのかを武蔵境で勉強してから作つてみませう。先入觀が無ひ方が獨創的なモノが出來る時もあるかも知れませんが、ロクでもなひモノが出來てしまふことの方が壓倒的に多ひのですから。